大阪港 シーサイドコスモ釣り解放区の現状と今後

大阪港にはシーサイドコスモをはじめ、舞洲プロムナードや夢舞大橋下、南港フェリーターミナル、カモメ大橋下ほか、数カ所の釣り解放区(釣りを禁止としないエリア)が設定されています。逆に言えば、大阪港では立入禁止区域ではなくても、釣り解放区以外での釣りを禁止していると解釈できます。

まず、なぜ大阪港に釣り解放区なるものが設定されているのか、その経緯を簡単に紹介します。2007年(だったはず?)、大阪湾奥の立入禁止場所で夜釣りをしていて、誤って落水。命を落とした1人の釣り人がことの発端でした。それまでにも釣り人の落水死亡事故は何度も発生していたはずですが、それまでと違ったのは死亡した釣り人の遺族が「立入禁止を誰にでもわかるように明示していない大阪市にも事故の責任がある(管理責任)」と訴訟を起こしたことでした。当時、近畿圏では新聞報道もされるなど、ある程度注目された裁判では確か、大阪市の責任は問われないことで落ち着いたはずです。しかしながら大阪港湾局をはじめとした大阪市側は、今後、同様の事態に見舞われないよう大阪港全域を立入禁止とする条例を設定しました。それはそうでしょう、勝手に釣りをして、落水し、命を落としたその責任を負えと訴えられたのではたまったものではありません。「ならば問答無用の立入禁止!(目的は釣り禁止)」というのはリスク回避の面から理解できます。ただ全域禁止については釣り人として、釣りを楽しむ権利を守る意味でも黙ってはいられないと、大阪府釣りインストラクター連絡機構(JOFI大阪)前代表の来田仁成氏を含め、日本釣振興会大阪府支部など釣り業界団体が釣り人代表として大阪市と協議、交渉をおこない、一部例外エリアとして「釣りを禁止としないエリア=釣り解放区」が設定されました。というのが、本当にざっくりとした経緯です(のはずです)。

大阪港の釣り解放区は、釣り人がその手でなんとか勝ち取った貴重な場所と言えます。

で、今回のシーサイドコスモ釣り解放区があるのは、大阪メトロ中央線のコスモスクエア駅を降りてすぐの大阪港に面した広大な海浜緑地内。海辺には遊歩道があり、たくさんの方々が散歩やジョギングなどを楽しまれる憩いの場。海側には安全柵もあり、小さなお子さんのいるご家族でも海のある景色を安心して楽しめるのはもちろん、釣り場としても申し分のない環境です。

Googleマップからのスクリーンショット © Google
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上の写真のとおり、釣り解放区は海浜緑地のすみっこの一角。決して広くない場所です。しかし駅近、コインパーキング隣接、公衆トイレ(2025年7月現在:故障使用中止)も柵もあり、魚影もそこそこ濃いといった好条件が重なると釣り人が集まらないわけがありません。結果、キャパオーバーとなり、釣り解放区からはみ出て竿を出す人が多くなります。で、釣り以外を楽しまれている方々と釣り人が重なる場面が増え、後方確認を怠って竿を振りかぶる釣り人に危ない目に遭わされたとの苦情もおそらくあるでしょう。さらに空き缶、ペットボトル、弁当ガラのポイ捨て(釣り人ばかりとは限りませんが)。もっと酷いのは、緑地内の洗い場で、釣った魚の内臓を出して捨てていくという、本当にバカな釣り人も。

目に余るマナー違反から近隣住民の方などが警察に通報する機会も多くなり、2〜3年前には釣り解放区外で釣りをしていた釣り人が年間十数名補導(逮捕)されたとの情報もあります。大阪港湾局も問題視し、「釣り解放区」や「釣り禁止」案内看板等の充実に加え、釣り解放区外で釣りをする人に注意喚起をおこなう監視員を派遣。しかし、監視員と注意された釣り人がさらにもめる。この状況に話題性を感じた在阪テレビ局が取材に訪れ、モラルのない釣り人を叩くような報道。

もう最悪です。

そうこうしているうちに、「釣り人の問題は、釣り人で解決しろ」なのか、「釣り人同士なら穏便に話ができるだろう」なのか、理由はわかりませんが行政から、JOFI大阪に巡視のお鉢がまわってきました。当初、JOFI大阪役員会でその話が出たとき、個人的には巡回に反対の立場でした。だって口論とか、もめるのイヤだし。いくら違反者に対してとはいえ、なんの権限があって注意するのかわからないし。ややこしい釣り人がいるのも十分知ってるし…。その後、紆余曲折を経て、権限に関しては大阪港湾局の代理という立場を明確にできるようにする(証明プレートの発行)。頭ごなしに「釣り解放区外だからいますぐ釣りを止めて解放区内に移動しろ!」ではなく、そこが釣り解放区外であることをお知らせし、将来に向けての釣り場保全やさらには拡大などの話をしながら啓蒙用のチラシを手渡す程度にとどめることで巡視の実施が決定。今年で確か3年目に入っているかと思います(その間、私自身は2回ほどしか巡回には参加していませんが)。

大阪港にあるすべての釣り解放区に言えることですが、シーサイドコスモにおいては特に、釣り人が注目され、試されているのだと思います。釣り人は水辺に立つと意外に視野が狭くなりがちです。「魚と向き合う」とか言うと、エキスパートっぽくてなんとなくかっこいい感じですが、「魚としか」向き合わないのはどうかと思います。もっと広い視野で周りとも向き合い、気遣い、迷惑にならないことが必要なのかと。ゴミを残さないのは最低限とし、マナーよく、モラルを守り、安全に釣りを楽しんでいれば、シーサイドコスモに釣り以外の目的で来られた方々の見方も変わり、もしかしたら「釣りをやってみたい」と思われるかもしれません。そんな人々が増え、市民からの釣りがしたいという声が大きくなれば、釣り解放区の拡大にもつながるのかもと、理想はそんなところです。

Googleマップからのスクリーンショット © Google

大阪港湾局や釣り団体が参加し、定期的に開催されている「大阪港釣り関係者会議」にJOFI大阪からも代表をはじめ複数名が出席しています。その際、「シーサイドコスモの釣り解放区をせめてコスモスクエア駅の前あたりまで拡大してほしい」「現状の解放区は狭くて、釣り人が集中するとかえって危険なのでは」といった話もしているとのことですが、巡視が必要な現状での拡大は、なんとも望み薄。しかしながら、釣り人が厳しい視線にさらされているからこそ逆にいま、この状況を好転できれば強烈な反作用で、釣り人を見る目も一気に良い方向に変わる可能性があるようにも思えるのですが、どうでしょう。

メジロ、ブリがあがった。ツバス、ハマチクラスの群れが回っている。近年不調の太刀魚が復調した、などなど。そんな情報をもとにやって来たが、釣り解放区が満員では入れない…。もうここまで来てるし、解放区から外れているけど、今日だけ!といった心情は個人的には本当によく解ります。でも、その「今日だけ!」が釣り場にとっての命取りになるかもしれない。むずかしく、悩ましい問題であります。

今回は、そんなところで。

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